認知症
認知症

認知症とは、いったん正常に発達した脳の機能が、何らかの原因により持続的に低下し、日常生活に支障をきたす状態を指します。高齢化社会が進む現代において、認知症はご本人だけでなく、ご家族や社会全体にとっても重要な課題となっています。
認知症は「物忘れの病気」と思われがちですが、単なる加齢による物忘れとは異なります。記憶障害をはじめ、判断力・理解力・言語能力・空間認識能力などさまざまな認知機能が低下し、社会生活や家庭生活に影響が出てくる病気です。
日本では2025年には約700万人が認知症になると推計されており、65歳以上の5人に1人が発症すると予測されています。
認知症は一つの病気ではなく、さまざまな疾患によって起こる**症候群(症状の集まり)**です。主な原因疾患として以下のものがあります。
アルツハイマー型認知症
認知症の中で最も多く、全体の約60〜70%を占めます。脳内にアミロイドβたんぱく質やタウたんぱく質が蓄積し、神経細胞が徐々に障害・消失することで発症します。初期は物忘れが中心ですが、進行すると判断力や言語機能も低下していきます。
脳血管性認知症
脳梗塞や脳出血など、脳の血管障害によって脳の一部が損傷し、認知機能が低下するタイプです。急激に症状が現れることもあり、身体の麻痺や言語障害を伴うこともあります。段階的に症状が進行するのが特徴です。
レビー小体型認知症
脳内にレビー小体という異常なたんぱく質の塊が蓄積することで起こります。幻視(実際には存在しないものが見える)やパーキンソン症状(手足の震え・筋肉のこわばり)が特徴です。認知機能の変動もあり、症状が日によって変わるのも特徴の一つです。
前頭側頭型認知症(ピック病)
前頭葉や側頭葉が萎縮することにより、人格変化や行動異常、言語障害が目立つタイプです。比較的若い世代(50〜60代)で発症することもあります。
そのほかにも慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症、甲状腺機能低下症、ビタミン欠乏症など、治療可能な認知症も存在します。早期に原因を特定することで進行を防げるケースもあるため、適切な診断が重要です。
認知症の症状は大きく「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD)」の2つに分けられます。
認知症の進行とともに現れる認知機能の障害です。すべての認知症患者さんに共通してみられる基本的な症状です。
中核症状に加えて現れる精神的・行動的な変化で、患者さんごとに異なります。
これらの症状はご本人の不安や環境要因によって悪化することもあり、周囲の適切な対応や介護環境の工夫が大切です。
認知症の診断は総合的な評価が必要です。以下のような検査・診察を行います。
問診
ご本人とご家族から、症状の経過、日常生活の様子、既往歴、服薬歴などを詳しく伺います。
認知機能検査
代表的なものに長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)やMMSE(ミニメンタルステート検査)があります。記憶・計算・言語能力・見当識などを総合的に評価します。
画像検査(CT・MRI)
脳の萎縮や脳梗塞、出血、腫瘍の有無を調べ、原因疾患を特定します。
血液検査
甲状腺機能やビタミン欠乏、感染症の有無などを確認し、治療可能な認知症を見逃さないようにします。
神経心理検査
記憶・注意・言語・視空間認知など、より詳細な認知機能の評価を行います。
認知症の治療は原因疾患により異なります。完全に治すことは難しい場合が多いですが、進行を遅らせたり症状を和らげる治療が可能です。
薬に頼らず、生活環境の調整やリハビリテーションを行うことも重要です。
また、家族の介護負担軽減のための支援も大切です。介護保険制度を活用したデイサービス・訪問看護・ショートステイなどの利用もおすすめです。
認知症は早期発見・早期対応が何よりも重要です。物忘れが気になる、生活の中で違和感がある場合は、お一人で悩まず、ぜひ当院の老年内科外来へご相談ください。
当院では認知症専門医による丁寧な診察・検査・治療方針のご提案を行っております。ご本人とご家族の不安を少しでも和らげ、安心して日々を過ごせるようサポートいたします。
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