乳がん治療
乳がん治療

乳がんは、日本人女性に最も多いがんのひとつです。近年は検診や医療技術の進歩により、早期発見・早期治療が可能になってきました。ここでは、乳がん治療の基本的な考え方と主な治療法についてご説明します。乳がんの治療法には、手術、化学療法(抗がん剤による治療)、放射線照射ホルモン療法(内分泌療法)などがあります。
根治療法(主治療)
術後補助療法
乳がん治療はしこりの大きさや拡がり、悪性度、リンパ節への転移、ホルモン感受性、閉経状態、病期などを考慮し、それぞれの病状によって最適な治療法を組み合わせて実施します。
乳がんの治療は、「がんを確実に取り除くこと」と「再発を防ぐこと」を目的に行われます。そのためには、患者さんのがんの進行度(ステージ)、ホルモン受容体やHER2の有無、年齢や体力などを総合的に判断して治療法を選びます。
大きく分けると、手術・放射線治療・薬物療法(ホルモン療法、化学療法、分子標的治療)があり、これらを組み合わせて行います。
リンパ節への転移の状況、しこりの大きさ、病期、ホルモン療法が効くかどうか、閉経状態などを参考にして治療法を選択します。
しこりの大きさが3cm以下で、乳管内にがんの広がりがないもの、多発していないものであれば、乳房を全部取らずにしこりの部分だけを取り除く手術(乳房温存術)が可能です。最近では温存術が多くなっています。 また乳房を全摘しても乳房を再建する手術も行われています。
通常は1週間以内です。乳房再建を行った場合は10日から2週間ぐらいです。
がんから産生・分泌されるたんぱく質を目印(マーカー)にしてがんの存在を調べるもので、乳がんの経過観察に用いられる血液検査です。
もちろん職場復帰は可能です。 術後の治療方針によって個人差がありますので医師と十分ご相談ください。
乳房全体を取除く手術です。
瘍と周りの乳腺の一部を切除する手術です。乳房温存手術では放射線照射を併用します。
“乳房温存術“は概ね次の条件を満たす方が対象となります。
しこりが小さくても、しこりの周りや乳管の中にがん細胞が拡がっていて、取り残してしまう可能性が高い場合は、温存した乳房に再発を起こしやすいので、適応とはなりません。
これらは進行度やがんの広がりによって選択されます。
また、リンパ節への転移が疑われる場合はセンチネルリンパ節生検や腋窩リンパ節郭清も行われます。近年は整容性や生活の質を重視し、再建手術を同時に行うケースも増えています。
乳がんに一番近いリンパ管に入ったがん細胞が最初に流れつくリンパ節のことで腋窩リンパ節(「センチネルリンパ節」といいます)を手術中に探し出して、このリンパ節にがんが転移していないかどうかを調べ(「センチネルリンパ節生検」といいます)転移がなければ腋窩リンパ節郭清を行わない方法が広く実施されるようになりました。これによって不必要な腋窩リンパ節郭清を省略し、術後に腕のむくみ・腕の知覚障害・運動障害などの合併症を減らすことができます。
乳がんは脇にあるリンパ節(腋窩リンパ節)を通って全身にひろがる性質があります。この腋窩リンパ節を取り除く方法を「腋窩リンパ節郭清」といいます。リンパ節の転移の有無によって治療方針が決まります
乳がん手術の種類は乳房を部分的または完全に切除する方法があります。乳房全摘出術(乳房切除術)を受けた患者さんは、乳房を再建する方法を選択することができます。再建手術には、自家組織(自分の体の組織を使った再建)や人工インプラント(シリコンなどを使った再建)などの方法があります。
比較的早期であってもがん細胞が血液やリンパ系を通って全身のどこかに広がっていることがあるため、手術後の再発を予防するために行われる治療です。全身的なものとして、化学療法(抗がん剤点滴)内分泌療法(ホルモン療法)があり、局所的には放射線療法があります。
一般的に乳がんの場合、これらの治療法をいくつか組み合わせて治療が行われます。
抗がん剤を用いた点滴治療を行います。目にみえる範囲のがんは、手術によって取り除きます。抗がん剤によって、体のどこかに潜んでいるかもしれない目に見えない微小ながん細胞をたたき、再発を防ごうというのが、抗がん剤治療の目的です。
抗がん剤治療は、再発リスクが高いと判断される患者さんに対して提案されます。抗がん剤治療は、患者さんにとって決して楽な治療ではありません。とくにがん細胞と同じように細胞分裂が活発に行われている粘膜や毛母細胞に作用が及びやすく、吐き気や脱毛、下痢、口内炎といった副作用が出ます。
ただ、最近はさまざまな副作用対策用の薬が出ていますので、ずいぶん副作用が軽減されています。
乳がん治療では、放射線は、乳房温存療法との併用、手術後の補助療法として使われます。乳房温存手術では、残っているかもしれないがん細胞をやっつけるために放射線を照射します。
放射線を照射することによって、乳房の局所再発率を3分の1に減らすことができます。
乳房の手術が終わり傷口もだいたい落ちついた時期に照射が始まります。手術後、抗がん剤による薬物療法と放射線治療の両方が必要な場合もすくなくありません。放射線療法は放射線をあてた局所の再発を防ぐ局所治療であるのに対し、抗がん剤は全身に効果のある治療法です。まず数か月間抗がん剤治療で全身的な治療を行い、その後放射線治療を行うことが多いです。
およそ5週間毎日(週に5日)通います。数分で終了します。標準治療は、乳房全体に放射線を照射する全乳房照射です。放射線を照射した部位が強く日焼けをしたように赤くなってヒリヒリしたり、痛みやかゆみ、水ぶくれができることもありますが、こうした症状は治療が終われば時間の経過とともに改善していきます。
乳がんの種類は色々あり、乳がん細胞には女性ホルモンであるエストロゲン、プロゲステロンというホルモンのレセプター(ホルモンが細胞に結合する部位)をがん細胞の表面に発現しているものと発現していないものがあります。乳がん細胞の多くは、このレセプターを発現していて、ホルモンに依存して大きくなります。ホルモン療法はがん細胞がエストロゲンの作用を受けないようにすることで、腫瘍の増殖を抑えます。
また増殖を促進するタンパク質の一種で、乳がんの中でもHER2が過剰に発現しているタイプをHER2陽性乳がんと呼びます。これらのレセプターの発現の有無は病理診断で行われます。HER2陽性乳がんは、他の乳がんに比べて成長が早く、再発リスクが高い特徴を持っています。しかし、HER2陽性乳がんには分子標的療法が効果的であり、適切な治療で良好な予後が期待できます。ハーセプチンなどの薬剤はHER2タンパク質に結合してがん細胞の増殖を抑制し、免疫システムを介してがん細胞を攻撃します。
比較的早期であってもがん細胞が血液やリンパ系を通って身体のほかの部分に広がっていることがあるため、手術後の再発を予防するために行われる治療のことです。全身的なものとして内分泌療法(ホルモン療法)、化学療法があり、局所的には放射線療法があります。
照射している部分に局所的に副作用の症状が出現することがあります。
乳がん術後の照射では、照射部位の皮膚の炎症が主な副作用ですが比較的軽度です。
乳がんの中で女性ホルモンががんの発育を促進するものがあります(ホルモン受容体陽性)。ホルモン受容体陽性の乳がんの場合は女性ホルモンを抑えることにより乳がんの再発を抑制することが証明されています。タモキシフェン(抗エストロゲン剤)やアロマターゼ阻害薬などを数年間にわたり内服します。副作用が少なく、再発抑制効果が高いため重要な治療法の1つです。
また閉経前の場合リュープリンやゾラデックスなど女性ホルモンを抑える注射を行うことがあります。
ノルバデックス(一般名タモキシフェン)
女性ホルモンと似た構造のこの薬は、乳がんのホルモン受容体に結合し、乳がんが女性ホルモンを取り込めなくします。
アロマターゼ阻害剤
アロマターゼという酵素を阻害することにより、女性ホルモンの分泌を抑制します。閉経後乳がんの患者さんが対象になります。
主に抗がん剤による点滴治療です。
がんの進行度が高い場合や再発リスクがある場合に行われます。複数の抗がん剤を組み合わせて投与し、がん細胞を直接攻撃することで、腫瘍の成長を抑制します。
薬剤により投与期間、回数は異なりますが、3か月~7か月の期間定期的に投与されます。
骨髄・毛根・消化器の粘膜など細胞分裂が活発な組織は抗がん剤でダメージを受けやすく、白血球減少、脱毛、吐気、倦怠感、神経障害など副作用となって現れます。抗がん剤の効果と副作用は表裏一体のものですから、副作用を恐れすぎず上手にコントロールしながら治療を続けることが大切です。
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