老年内科
老年内科

老年内科は、主に65歳以上の方を対象とし、高齢者特有の症状や健康上の悩み、介護上の問題などに幅広く対応する診療科です。年を重ねると個人差はありますが、生活習慣病の合併症が複数の臓器に現れたり、転倒、歩行障害、失禁、意識障害、手足のしびれ、原因不明の発熱など、様々な症状が現れたりします。さらに、もの忘れなどの認知機能障害が出現する率も高まります。そのため、高齢者の疾患の特徴を十分に理解した医師の診療を受けることが大切です。
複数の病気を患っている方、体の機能が低下してきた方、どの診療科を受診していいのかわからない方など、お気軽に受診ください。
高齢の方の診断や治療には、様々なリスクや状態を考慮した複合的な判断が重要となります。
上記のような症状や困りごとがあれば、お気軽にご相談ください。
フレイルは「虚弱」「脆弱」などを意味する「Frailty」が語源で、足腰の筋力が低下し、疲れやすい、やる気が出ない、食欲がないなどの症状がみられる状態をいいます。要介護状態になる危険が高い状態であると同時に、適切な介入や支援を行うことで健康を維持して、自立した生活を送れる状態でもあります。フレイル予防はバランスの良い食事と適度な運動が基本となります。
認知症の中で最も多いのがアルツハイマー型認知症で、脳神経が変性し脳の一部が萎縮していく過程で生じてきます。もの忘れで発症することが多く、ゆっくりと進行します。次に多いのが脳血管障害(脳梗塞や脳出血など)による血管性認知症です。障害を受けた脳の部位により症状が異なります。ゆっくり進行することもあれば、急速に進むケースもあります。幻視や手足が震えたり歩幅が小刻みになったりする症状が現れるレビー小体型認知症などもあります。
骨粗鬆症は、骨の強度が低下して骨折しやすくなる状態をいいます。骨折を起こすと身体機能の低下をきたし、生活の質が低下し、寝たきりになる場合もあります。骨強度の約70%は骨密度により決まり、残りの30%は骨質により決まるといわれています。骨粗鬆症の予防では、この両方を維持することが大切です。骨折のリスク因子には骨密度低下のほかに、喫煙、飲酒、ステロイド薬の使用、骨折の家族歴、運動不足なども挙げられます。
心臓の冠動脈が動脈硬化などによって狭くなると、心筋(心臓壁を構成する筋肉)に送られる血液量が不足し、心筋が酸素不足となります。このときの痛みが狭心症の痛みです。労作性狭心症は「階段を上ると胸が締めつけられるように痛くなる」、「重いものを持ち上げたり、坂道を歩いたりすると胸が苦しく痛む、安静にすると楽になる」という症状がみられます。痛みの特徴としては圧迫感や絞扼(こうやく)感などがあり、前胸部、みぞおち、肩、頸などに生じます。歯やのどが痛むケースもあります。
心筋梗塞とは、動脈硬化が進行して冠動脈にできていたプラーク(血液中のコレステロールや脂肪からできた粥状の物質)が冠動脈を塞いでしまい、心筋に血液が完全に行かなくなり、心筋が壊死した状態をいいます。突然、胸が焼けるように重苦しくなり、締め付けられ押しつぶされるような症状が現れます。冷や汗が出たり、吐き気があったりすることもあります。
また、痛みが胸ではなく、みぞおちや背中に感じる放散痛が起こることもあります。一方で、高齢者や糖尿病の方では、心筋梗塞を起こしていても胸痛を全く感じない無症候性心筋虚血を起こす場合もあるので、注意が必要です。
心臓弁膜症とは心臓にある弁に障害が起き、本来の機能や役割を果たせなくなった状態をいいます。大きく分けて、弁の開きが悪くなり血液の流れが妨げられる「狭窄」と、弁の閉じ方が不完全なために血流が逆流してしまう「閉鎖不全」があります。典型的な症状は、息切れ、胸の痛み、ドキドキ、気を失うなどがありますが、心臓弁膜症に特有なものはありません。症状があっても加齢に伴う体の変化に似ていることから、見逃されがちなので注意が必要です。
心不全は「急性心不全」と「慢性心不全」に分けられ、急性心不全は、短期間で激しい呼吸困難などの症状が現れることから、重症の場合、命を失う危険性が高くなります。一方、慢性心不全は、ちょっとした動作でも動悸や息切れがしたり、疲れやすくなります。咳や痰が止まらない、むくみが出るといった症状が現れることもあります。
高齢の方の不整脈でよくみられる症状として、めまい、失禁、けいれんがあります。これらは心臓がいつもよりも早すぎたり、遅すぎたりすることで、心臓から押し出される血液量が少なくなり、脳に十分な血液が行き届かなくなってしまうことで生じます。不整脈は治療の必要のないものから危険なものまで様々ですが、高齢者の場合、徐々に機能が衰えている分、不整脈の症状に少しずつ慣れてしまい、自覚症状としてとらえることができず、気づいた時には重大な不整脈が出ていた、というケースもあります。
脳卒中の中で最も多いのが脳梗塞で約7割を占めています。次いで脳出血が2割、くも膜下出血が1割といわれています。
脳梗塞で脳の血管が詰まると、急に手足が動かなくなったり、感覚が麻痺したりします。言葉がうまく話せない、話が理解できない、意識がなくなるなどの症状が起こることもあります。
脳出血は、頭痛があることがほとんどで、手足に力が入りにくい、ろれつが回らない、顔がゆがむといった症状が急に現れてきます。
くも膜下出血は、急にハンマーで殴られたような激しい頭痛が生じます。出血量が多い場合、意識を失ったり、手足の脱力が生じたりします。
脳血管疾患の多くは、ある日突然発症し、様々な後遺症が残ることが多い疾患といえます。そのため、機能回復と維持を目的としたリハビリテーションが重要な役割を果たしています。
生活習慣病は、不適切な食生活、運動不足、喫煙、過度の飲酒、過剰なストレスなど、好ましくない習慣や環境が積み重なると発症リスクが高まります。がんや脳血管疾患及び心疾患の危険因子となる肥満症、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、動脈硬化症などはいずれも生活習慣病とされています。
これらは気づかないうちに進行し、脳や心臓、血管などにダメージを与えていきます。その結果、ある日突然、心筋梗塞や脳卒中など、命に関わる重篤な疾患を引き起こすことがあります。高齢者の生活習慣病治療では、認知機能障害やADL(日常生活動作)の低下などをきたしやすいため、合併症の予防とともに介護者の負担を軽減することも目的となります。
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